俺はベンチから立ち上がり、男を茫然と見ていた。


「―――昔―、昔、あるところに――――」


男は子供達に紙芝居を読んでいた。
子供達はアイスを食べながら、男の話を聞いている。


「はっ………」


俺はやるべきことを思い出した。
ノートに手に取り、『Infinite Information』を配る男の特徴を見た。


<調査した男の特徴>
・50代前半の男(現在)
・特徴:麦わら帽子(夏)
・場所:公園
・活動:紙芝居
・対象:子供


俺はノートと男を見比べながら、確認した。
歳は40代だろう。
思ったよりも若い。




―――10分後
「―――そして、勇者は魔王を倒しに、城へ向かいました。
―――おしまい」


紙芝居が終わったようだ。
子供達は拍手をしていた。


「さてと………」


男は紙芝居を片付け始めた。


「おじさん。
勇者は最後、どうなったの」


子供の一人が男に聞いた。


「そうだよ。
どうなったんだよー」


他の子供も男に聞いた。
男は笑顔を子供達に向けた。


「続きが知りたいか」


男は子供達に聞いた。


「うん」


子供は答えた。
男はカゴに置いている鞄に手を入れ、何かを取り出した。
それを一人の子供に渡した。


「続きはこの中にある」

「うん。わかった」


男から何かを受け取った子供は嬉しそうな顔をしていた。


「ずるーい」


他の子供達が自分達も欲しいと言いだした。


「仕方がないな~」


男は嬉しそうな顔をしながら、子供達に何かを配っている。


「皆、もらったかな~」

「うん」


男に言われて、子供達は返事をした。


「君達なら、必ずクリアーすることができる」


そう言うと男は自転車に乗った。
紙芝居も片付け終わり、用事も済ませたからだろう。