「………」


辻本は答えない。

無理もない話だ。

答えれば殺されることは誰でもわかる。

俺も長年、この仕事をしている。

だから、分かるんだ。

辻本が答えないことぐらい。

ただ、俺達は確実に仕事を達成するために標的に3分間の猶予を与えている。

これは本人の確認が目的だが、情報を聞き出すことも視野に入れている。




『G』の隠密部隊は基本二人一組の小隊で行う。

一人が接近タイプ

もう一人が遠距離タイプ

短期間単独で行動しなければならない任務において、そのうちの一人に遠距離タイプを入れることで任務の失敗時の報告を速やかに行うことが出来る。

よって、遠距離タイプは任務の報告やその後の対応を行う。

接近タイプはその真逆だ。敵に真っ向から挑む。

命の危険だけでなく、敵に捕まれば遠距離タイプの仲間に殺される。

この体制を確立することで外部への情報流出を防ぐ。

さらに仕事を速やかに行うことが可能だ。

仕事は他の部隊と同じだが、班ごとに独自の規則を作る班もある。

その一つが俺の班だ。


『3分間の猶予』


この時間だけはどの時間よりも長く感じる。

標的の命を取るまでの3分間、俺は無防備になるからだ。

今頃、相棒が俺と標的に照準を定めているだろう。