俺は男の腕を噛みついた。

男の悲鳴と同時に噛んだ腕を無我夢中で振り、離そうとした。

俺は一度離れ、男を見た。

彼らは驚いていた。

まるで『バケモノ』を見ているようだ。

そういう顔は何度も見てきた。

動物に変身できる人間なんて稀だ。

過去に何人か存在している。

そのことを知らない奴にとっては不気味な存在だ。

男達が動揺している間に再び攻めた。

俺は腕を怪我した男の首に噛みつき、頭と胴体を切断した。

首なしの胴体から血が一気に噴き出した。

俺は銜えた男の首を地面に投げ、もう一人の男の首を噛みに向かった。

男は逃げる。

だが、俺から逃げることはできない。

背中を向けた男の首を容赦なく襲った。

先程同様に血が吹き出る。

一瞬で白く積もった雪は真っ赤に染まった。




俺は『狼』の姿で車の方へ向かった。

後部座席に標的がいる。

隣には女が一人いた。

議長の資料から、標的の秘書をやっている奴だ。


「車から降りろ」


標的と女は車から降りた。

俺は標的の顔を見た。

ここにいる標的が影武者かどうかを確認しなければならない。

俺は顔を標的の顔に近づけた。

標的は俺と目を合わせた。

目の前の獲物が逃がさないに警戒しながら尋ねた。


「お前は『W』創設者、辻本ユウジか」