「神山博士か………」


アイドは頭を掻いた。


「ああ。
俺が神山博士と出会った時、『無能者』用の『キャンセラー』しか開発していなかった。
でも、俺が死んでから、あの人は戦闘用の『キャンセラー』を作った。
そのおかげで、当初予定していた『計画』が大きくズレた」

「『計画』か………
俺から見れば、君の『計画』には狂いがなかったと思うけど」

「実際にはある程度、『計画』を修正したにすぎない。
『W』五代目総長の殺害やアカネを『女王』にする予定。
それに、『ヘブン』国内での変革………
多少『計画』を修正したが、結果として計画通りになった」


アイドは黙った。
何かを考えているのだろう。


「どうして、『W』五代目総長を殺さなかったの。
邪魔なら殺せばよかったのに………
君の知っている弱点を突けば簡単に殺せたんでしょ」


アイドの行っていることは正論だ。


「殺すチャンスは何度もあった。
『C』で活動してから、初めて『W』五代目総長と出会った時、俺は奴の弱点………
つまり、能力発動前に『電撃』能力で攻撃した」

「発動前………
それが『W』五代目総長の弱点なの」


アイドは驚いた顔をしていた。


「ああ。
『能力者』なら誰もが持つ弱点だ。
奴の『能力』がいくら『肉体変換』、あの人の場合は『強化』と言っているが………
特赦な能力を持っていても、能力発動前なら『ただの人間』だ。
誰でも倒せる。俺は『能力発動前』に攻撃をした。
だが、あの人のもつ『キャンセラー』………
『GDS-00改:VERSION=GLOVE』で防がれた。
………俺に付けられた傷を根に持っているらしいな」

「ん………どういうこと」


アイドは聞いてきた。


「いや。こっちの話だ。
その後だ。
俺が『W』五代目総長を殺せなかったことで『計画』はズレ始めた。
メンバーの二人は辞めるし………
『R』は『くだらない計画』を実行するし………
おかげで、俺自身で修正することになった。
俺はあの人と交渉した。
そして、賭けをした。
『神山ミコト』が世界を滅ぼすか滅ぼさないか………」

「君はどっちに賭けるたの………」