「私は高校に進学してから、勉学に励んでね。
いずれは『能力病』を治療できる人間になりたかった。
だが、世界はそれを認めない。
君は知っているか。
学生がなりたくない職業を………」


俺は首を振った。


「技術者や科学者といった最先端技術を作る研究職だよ。
あくまで噂だが、歴史に残る研究者は皆、不可解な死を遂げている。
まるで世界がそれを認めていなようにね………
そこからだ。
私が『W』と手を組もうと思ったのは………
いくら知識を頭に詰め込んだところで、資金がなければ何もできない。
だから、資金を得るために『W』に所属した。
そして、彼らから聞かされたよ。
『世界は成長を止めた』と………
『W』は世界という動かない歯車を動かすネジのような存在だと」


俺は森下の話を聞きながら、昔の事を考えていた。


「さて、そろそろ時間だ。
タツロウ君と君達との戦いで辺りは炎の海となった。
君には悪いが、一緒に来てもらう。
いいね」


森下は俺の方へ寄って来た。


「心配するな。
悪いようにはしない。
君を助けるかわりに、情報をもらう。
君の状態を見る限り、動けないんだろ」


確かに、森下の話していることは正しい。
足が思うように動かない以上、逃げ遅れる可能性がある。
だからといって、掴まるわけにはいかない。


森下は俺の方へ手を差し伸べた。
俺は隠し持っていたナイフを持ち、森下に向かって、『衝撃』能力で強化された斬撃を放った。


「わぁっ………」


森下は突然、ナイフを出した俺に驚き、瞬間的に避けた。
斬撃は森下に当たらず、そのまま、標的に向かった。
森下の声を聞き、振り向いた標的は目の前に迫る斬撃に驚き、右手を前に出した。

一瞬の隙だったのかもしれない………
森下が現れたことで、警戒心を解いていたのかもしれない………
あるいはバケモノ自身が限界だったのかもしれない………

俺の放った斬撃は標的の右手を切り付けた。