森下という男が俺の目の前に来た。


「君も『ヘブン』の軍人か。
確か、『W』殲滅部隊の………」


俺は頷いた。
正直、何を言っているのかがわからない。


「少し前にね………
君の仲間を一人捕まえたんだ。
そこで彼に君達の事を色々と聞かせてもらったよ。
『W』総長の暗殺。
そして、タツロウ君を狙う理由を………
だが、君達のことは『ヘブン』の軍人としか話さない。
なかなか、優秀な軍人がこの国にはいるようだね」


多分、掴まった『G』隠密部隊の奴が適当な解答をしたのだろう。
確かに、話の流れから考えれば、『ヘブン』の軍人が『W』を攻撃する話には納得が出来る。


「そいつはどうなった」


俺は森下に聞いた。


「処分させてもらった………
言っておくけど、私は殺していないからね。
そこだけ勘違いしないでくれよ」


俺はこの場をどう逃げるかを考えていた。
森下と標的はある程度の油断をしている。
俺の脚もだいぶ回復した。
後はタイミングだけだ。


「君も『W』は世界の敵だと………
そう思っているの」


森下が俺に聞いた。


「ああ」


俺は素直に答えた。


「そうだね。
確かに君の答えは正しいだろう。
『W』がいなければ、こんな戦いもなかったし、人が死ぬこともなかった」

「それがわかっていて………」

「この世界は少し『おかしい』んだ。
私はそれを正したい」

「意味がわからないな」

「8年前………
私が中学2年次に母が病気を患ってね。
『能力病』って聞いたことがあるかな。
私は助けたかった。
だが、当時の私には何の力もなかった。
私の母がね、死ぬ寸前で、私に言ったんだ。
『政治家:五十嵐シロウ』を支え、自分のように亡くなる人々を救ってほしいと………
私は誓った。
今はまだ、幼いけれど、いずれば………
だが、母が亡くなり、すぐに五十嵐さんは殺された。
私の『誓い』とはなんだったんだろう………
そう感じるようになった」


俺は森下の話を聞きながら、五十嵐の事を思い出していた。