―――現在

アイドは目を開け、俺の方を見た。


「君は約束を果たした」

「ああ」


アイドは俺達が現実世界へ行ったら、『選択の石』を破壊するのだろう。


「君にプレゼントがある」


アイドは一枚の紙を俺に渡した。


「これは………」


何かの書類なのはわかるが、何を意味しているのがわからない。


「それは口座履歴だ。
『G』の管理部に以前から監視するように頼んでおいた」

「誰の口座だ」


俺にはアイドの言いたいことがわからない。


「君の友達だ」

「まさか」

「君の友人は記憶を取り戻したようだね」


仮想世界の管理者は生まれ変わる度に『記憶を継ぐ』ように設定した。

亡くなり、再び『生』を受ける。

ただ、幼少期から記憶があるわけではない。

時が経つと同時に記憶がよみがえる。

次第に人格統合が行われ、本人となる。

相棒が死んで9年………

相棒は早い時期に記憶を取り戻したらしい。


「彼の居場所は分かった。
君次第で案内するよ」

「今さら………
俺はお前を信用していない」

「大丈夫。
俺と君がこの場を離れれば、君達の方は『超越者』 2人。
俺達は『多才能力者』3人。
こちらの方が状況は不利だ。
そうだろ」


確かにそうだ。

奴の言うことは一理ある。


「決めるのは君だ」


俺はミコトを見た。

最後の最後までミコトを頼ることになるとは………


「どうするの」

「案内してくれ」

「わかった」


アイドは粒子を俺の身体にまとった。

アイドが空に浮かび上がると、俺も同時に浮かび上がった。

俺はミコトと山本を見た。


「少し待ってくれ。すぐ戻る」


二人とも頷いた。


「ありがとう」

俺とアイドは『選択の石』から離れ、相棒の所へ向かった。