「世界にとってか………
お前はこの子供を見たのか」

「………見た」


相棒は身体を起こし、窓を開けた。

夜中なので、肌寒い。


「俺は特例任務の記録係をしたんだ。
遠くから、その子供の戦う姿を映像に残す仕事だ」

「その映像は………」


俺は『G』を脅かす程の子供だ。

どれほどの戦闘能力があるのかを確認したかった。


「機密情報だ。外部に流出するわけにはいかない」

「それじゃあ、この資料をどうやって持ってきた」


『G』は情報流出を極端に嫌っている。

そのため、報告書などの資料が『G』本部内から持ち出しを禁止されている。

だが、俺が持つ資料はあきらかに極秘資料だ。


「それは今日使う資料だ。
いくら『G』からの特例でも、言葉で伝えただけで国のトップ達が信じるか。
俺なら信じない。
そのため、持ってきた」


俺は資料を見たと、資料には議長の印鑑が押されている。

確かにこの資料を見れば、『G』に所属している者は信じるだろう。


「………危険か。まだ子供だろ」

「子供だからだ」


相棒は俺を見ながら言った。


「その子供は自分の力を理解していない」

「無能者ってことか」

「いいや。能力のことじゃない。
精神面での話だ。
お前は軍用兵器『B2M2』を知っているか」

「ああ。対戦艦用遠距離型ミサイルだろ」


『B2M2』とは『ノワール』で開発された軍用兵器だ。

破壊力はこの世界ではトップクラスだが、実戦で使われたことはない。


「特例任務でそのミサイルを子供に撃ったんだ」

「ハッ………」


俺は驚いた。


「前回の任務でも、特例があったんだ。
そこで10人の隠密部隊が冗談半分で『B2M2』の許可を議長に要求したんだ。
隊員達もさすがに通らないと思っていたらしいが、議長は『B2M2』の許可を出した。
そして、任務時に使用。俺はその光景を記録した」

「子供は………」

「生きてたさ。遠くから記録したため、はっきりとは確認できないが、無傷だった」

「その子供の持つ能力で防いだってことか。
資料に書かれた『空間系』………
あるいは『肉体強化系』か」