「遡ること、1か月前。
議長の任務で『W』三代目総長を拉致する任務があった」

「『W』総長をか………」

「俺も詳しい話は知らないが、どうやら新たに四代目総長が決まったらしい。
よって『W』三代目総長は隠居生活に入ったわけだ。
議長は『G』の裏切り者を見つけるために拉致をする任務を隠密部隊に指示した。
だが、失敗に終わった。
それから2度の任務が行われ、全て失敗だ」

「原因は………」

「その写真に写る子供だ」


俺はバインダーに挟まれた写真を見た。


「議長は標的を『W』三代目総長から子供に移した。
そして、特例で10人の隠密部隊を着任させた。
結果は失敗だ」

「馬鹿な………」

「戦闘の混乱で『W』三代目総長は行方不明。
現在わかることは子供の居場所だけだ」

「それが井上研究所か」

「俺の任務は特例3の情報操作だ。
今日中に総理大臣・警視総監・病院・軍の最高指揮官に根回しをする」

「俺と直接会って良かったのか。
施設を見張っている奴がいるかもしれない」

「大丈夫だ。
あらかじめ連絡を入れた。
研究所の情報を提供してもらうと言ってある」

「だが、俺は………」

「さっき、お前が逃がした『山口シンゴ』だったか。
あいつの話があれば十分だ」

「そうか」


だから、相棒は俺の話に耳を傾けていたのか。


「安心しろ。俺は戦わない。
情報操作をするだけだ」

「『G』に勝てる見込みはあるのか。
その子供と戦って………」


相棒はハンドルに顔をつけた。


「正直、厳しい状況だ」

「能力は………」

「不明だ。
ただ、一つだけ分かることがある」


相棒は視線を俺に向けた。


「その子供は間違いなく、危険だ」

「………それは俺達にとってもか」

「いいや。世界にとってだ」