「それなら、質問に答えろ。お前の名前は………」

「山口シンゴ」


山口は答えた。


「お前はなぜ『W』に所属しているんだ。
傭兵なら、どこにでもある。
わざわざ国際テロ組織『W』に所属しなくてもいいだろ」

「それは………」


山口は黙り込んだ。


「3秒やる。1………2………」

「復讐するためだ」


山口は答えた。


「………復讐か。誰の」

「父親だ」

「父親か………
『W』と復讐は何の関係があるんだ」

「俺の父親は科学者だったんだ。
良い父親だった。
だけど殺された。
俺はそいつを見つけるために………」

「ちなみにその父親の研究は………
『能力開発』か」


山口は驚いたように俺の方を見た。

正確には声のする方を見たが正しいが………


「そうか。
それで始めは『W』に殺した奴がいると思ったわけか。
見つけたか」


山口は下を向き、首を横に振った。


「次の質問だ。あの研究所………
井上研究所は何を研究しているんだ」


半年間、俺は研究所の警固を行っていた。

世間一般的には『クローン技術』の研究をしていることになっている。

しかし、あれだけの警備をする理由は一体何なのか。


「私も分かりません」


山口の様子から本当のようだ。


「それなら、なぜお前は……
お前らはあの研究所を警備しているんだ。
俺の調べではお前らは『W』内では優秀な人材だと考えている。
ではどうして………」

「………幹部候補だからです」

「幹部候補」


俺はそんな話は聞いたことがなかった。


「『W』で作戦指揮・実行をする部隊長候補が正しいと思いますが………」

「聞いたことがないな」

「一部でしか知られてない話です」


俺は井上研究所での生活を思い出していた。

そこには仲間同士で監視をする日々が浮かび上がった。