―――車の中
相棒は車を運転している。

俺は隣で寝ている山口を見ていた。


「俺の存在を他人に知られるわけにはいかない。
その男の用を先に終わらせろ」


静まり返った車内で唐突に相棒が言った。

それ以降、相棒は一言も話さなくなった。

俺は山口の頬を何度も叩いた。

強く殴りすぎたのかもしれない。

5回程叩くと、山口は意識を取り戻した。


「ん―………ん―――………」


山口が暴れ出した。

俺は山口の腹を殴ると、静かになった。


「聞こえるか。聞こえるなら頷け」


俺は山口に言った。


山口は痛みを抑えながら、頷いた。


「お前が変な行動をしなければ、逃がしてやる。
もし、変な行動をしたら………
わかるな」


俺は山口の耳元で言った。


「ん――……」


山口はまた頷いた。

俺は山口の口を閉じたガムテープを取った。


「ハ―――………ハ――………」


苦しかったのだろう。

ガムテープを外すと呼吸を何度もした。


「これから、俺の質問にいくつか答えてもらう。
いいな」


俺は山口に言った。

山口はまだ息を整えていた。


「まず、お前の名前を答えろ」


俺は山口に質問した。

だが、山口は答えない。


「答えないわけか………」


予想通りだった。

半年間、山口と同じ仕事をしていたが、こいつの無口は筋金入りだ。


「銃を」


俺は相棒に言った。

相棒は運転しながら、俺に銃を渡した。

受け取った銃を右手に持ち、山口のこめかみに銃口を向けた。


「無口なのはいいことだ。
だが、立場を考えろ。
無口な奴には二種類の人間がいる。
一つは考えている奴。
もう一つは考えていない奴。
お前はもちろん、前者だろ」


山口は頷いた。