―――1時間後
目的地のアパートに着いた。

このアパートは2階建てで築20年程だ。

アパートの横に車が一台置かれていた。

多分、相棒の車だろう。

俺は助手席に座っている山口に話しかけた。


「ちょっと待っててくれ。すぐ戻る」


俺は車を降りた。

すると、助手席に座っていた山口も降りた。


「私も行きます」


山口が言った。


「………それは命令だからか」


山口は首を縦に振った。

俺は井上研究所に半年居たが、一度も外出したことがない。

だが、研究所や宿舎の監視体制から、外出する際に監視が付くのだろう。


「わかった。ただ、俺の友達は人見知りだ」


そういうと、俺は相棒の居る部屋へ向かった。




―――相棒の居る部屋(201号室)
俺達は相棒の部屋の前に来た。

部屋の呼び出し音を押すと扉が少し開いた

しばらくして、書類の挟まれたバインダーを持った手が出てきた。

俺はそのバインダーを受け取った。


「大丈夫か」


俺は相棒に言った。


「ゴホッ………大丈夫。
風邪がうつるといけないから………」


相棒は咳をしながら言った。


「何か買ってこようか」

「頼む。
医者が診断書の備考欄に食べていい物を書いてくれたから、それを買って来てくれ」

「わかった」


俺は資料を見ようとしたが、隣には山口が居る。


「すまないが………」


山口は俺から距離を置いた。


「ありがとう」


山口は俺の監視をしている。

しかし、組織に関係のない人間の個人情報を見る権利はない。

相棒は俺の友達であり、山口にとっては他人だ。

山口もその事は理解しているのだろう。

相棒は扉を閉めた。

俺は山口が居る場所を確認してから、資料を見た。