「ほら」
健チャンが指差す方向に、奈良サンがいた。
目を真っ赤にして泣いている。
俺らの後から、野次馬が集まってきた。
もう、俺無理だわ。
「健チャン、俺、行ってくる」
「ぇ!お、おい」

「ヒック・・・」
「奈良サン」
俺は、無理やり奈良サンを引っ張った。
「ちょっと・・・!」
聞こえない振りして、階段につれってった。
ここなら、誰も居ないよな。

「ちょっと、なに・・・すんの」
奈良サンは、怒りながら泣いてる。
「ごめん」
我慢できなかったんだよ。
ただ、見に来てるだけの野次馬なんかに、見られたくなかったんだ。
「あのさ・・・、どした?」
優しく問いかけてみる。
「あ・・・んたに、関係ない・・・」
やっぱ怒ってる。
どうしよ。
「とりあえず、ジュース買ってくるわ」
ここは、ジュースだろ。

俺は、オレンジジュースを買って、階段に行った。

きっと、居なくなってるだろ。
だって、怒ってたし。
そんなことを考えながら、階段へ急いだ。
「やっぱ、いね「遅いよ・・・」
ぇ?
「ずっと、待ってたんだから」
ちゃんと彼女は待っててくれて、怒ってなく、泣いてもいなかった。
そして、笑ってた。
きっと、無理やり・・・。
「ご、ごめん。」
あんなに考えてた俺が、馬鹿だった。
「オレンジでよかった?」
「うん!あたし、ソレ大好き」
よかった。

ってか、何で俺、こんなに一生懸命なんだ?
たかが、女だ。
めんどい女なんだ。

どしちゃったかな、俺・・・。