アパートの部屋の電気が点いているのをみると、なぜかとてもほっとする。

レイは、本当に小悪魔のような女の子で、いつ、ふらっと家を出ていくのか心配で仕方なかった。



階段を上がって、手前の俺の部屋。

玄関を開けると、エプロン姿のレイがキッチンに立っていた。


「おかえり。もうちょっとで夜ごはんが出来るから、待っててね」

菜箸を持って楽しそうに、鼻歌を歌っている。



そんな彼女を、後ろから抱きしめる。

「ごきげんだね。いい事、あった?」


少しかがんで、一度、頬にキスをする。


「いい事?あったと言えば、あったかな」

そのまま、その口を耳元に移動させ、耳元を甘噛みすると、レイは身をよじらせてくすぐったがる。


「なんだか、妬けるな」

腕の中のレイを反転させ、俺達は、抱き合うような形になった。


「妬ける?どうして」

「俺の知らない所で、俺じゃない何かがレイをごきげんさせている所に、かな」


レイは、すっ、と俺の腕から抜け出した。

「何、言ってんの。こどもじゃないんだから。ほら、ごはん、食べよ」


レイはそのまま、食器棚から皿を出して、こっちを見た。

満面の、笑みを浮かべて。