「帰る場所もないなら、うちに来ます? 広くて静かですよ」

白髪の子は踵を返し、微笑んだ。
そして、帯をほどき、肩を露出させ、着物を脱いでいく。

ついには、一糸纏わぬ姿となり、大きく深呼吸した。


月に照らされた彼女の肌は、白く美しく、見惚れていた俺の視線に気づいたのか、一瞬だけ艶っぽい笑みを浮かべられた。

そして、木の葉が風に乗り、彼女を包みこむと、白髪の女の子は居なくなっていた。

先ほどまで、彼女が立っていた所には、彼女を包んでいた着物と木の葉。
そして三本の尾を、ゆらゆらとさせ、白い毛並みをした狐がこちらを見据えていた。


長く感じたが、おそらく、十秒も満たなかったのだろう。
だが、彼女の肌が、目に焼き付いて離れない。


「乗って」

馬より小柄だが、狐にしては巨大な、それが、俺に近付きそう言った。
急いで着物を広い、言われた通りに背へまたがると、凄まじい速さで跳び出した。

着物からなのか、それとも白い毛並みの彼女からなのかはわからないが、良い香りがした。


って、なにを変な事を考えて居るんだ……。

彼女に悟られぬうちに、気を沈めないと……。