聡明さ溢れる「父」

優しく美しい「母」


こんなに幸せそうなのに、どこで壊れてしまったんだろう

こんなに優しそうなのに、なぜ私達を捨てたのだろう

「一つ言い訳をさせてくれないか」

「こんなに可愛い美月と美紅を最後まで育てきらなかったこと、それは親失格の行為だ。許されるべきではない。でも責めないでやってくれ」

「お前たちのお母さんはお前たちのように強くはなかったんだ」

善蔵は畳み掛けるように一気に言った

善蔵の頬には涙が伝っていた


お母さんは「弱かった」

お父さんも支えきれなかった


美月と美紅は言葉がでなかった

やがて美紅がおもむろに口を開いた

「もう責めていないわ」

「もう随分前に終わったことよ。今更責めたりしないわ」


そこまで言って美紅の目から涙がこぼれた

美月も堪えられなくなった

三人でひとしきり泣いた



「そうだ、あとひとつ」

善蔵は思い出した

「お前たちの名前の由来だが、」


「美月と美紅が生まれた日の夜は空にそれは綺麗な-この世のものとは思えないほど美しい-紅い月が出ていたそうだ」