「弥生は、まだ“視える”のか。」


善蔵は怪訝そうに聞いた


善蔵はもともと第六感や超能力、予知能力、幽霊、超常現象といった類のものは全く信じていないのだ


ただ弥生が昔から度々“視る”夢は信じざるをえなかった



「“視えた”みたいです。というより、ちょっと前から視え続けているんです。」



「なんだと!」


これには善蔵も驚きを隠せなかった


美月が美紅と笑い、泣き、怒り、成長する過程を共有していた時間でさえ、美月だけが離れる運命は刻一刻と進み続けていたのだ



「あの子たちの苦労は…」

「弥生は、そろそろだろうって言います。このままいくと美月は本当に壊れてしまう。美紅に助けてくれる人が現れたように、美月にもそんな存在が必要だ。今でこそ、親として美月にしてやれる最初で最後なんだって。」



紫雨は小さいながらも力強く続けた



「だから、今しかないんです。あの子を救えるのは。俺だってここのところずっと、俺の娘達を見てきました。立派に…本当に立派に育ててくださった…」



紫雨は涙ぐんでいた


感謝と悔しさを混ぜると塩になるらしい


そう思うくらい、辛かったのだ



「でもだからこそ、ここで美月を壊すわけにいかない。今しかないんです。」



紫雨は懇願した