ウタカタ



高階が、なんでか俺を見つめてきた。


なんだよ、と思う。
俺、顔に出してたかな。


嬉しいって。



「なに?」


なんだか気恥ずかしくなって、眉を歪めて問う。




「あ、いえ、か・・」


そこまで言って、一瞬口を閉ざす。

ほんの一瞬だけど、瞳が揺れる。


「・・か、変わってるけど、いい名前、ですよね!!」



ね!! と身を乗り出すくらいの勢いで言いながら、めちゃくちゃいい笑顔を浮かべてる。



その勢いに思わず身を引いた。


「そ、そうか?」


な、なんだ?
揺れたと思ったのは気のせいか?


「そうですよ。美しい和、なんて。宮本さん人当りいいし、まさに『名は体を表す』ですね」


美しい、和。


そう言われてはっとする。

ずっと自分の名前が嫌いで、由来なんて聞こうともしなかったけど。


そんな意味を込めてつけてくれたのかな、俺の親も。




けど。


「・・俺、人当りいいか??」

悪くはないと思うけど、良くもないと思う。

嫌われてるな、と感じることもある。


そう思って尋ねると、高階は首を傾げた。

なにを言ってるの? とでもいいたげに。


「いいじゃないですか。・・なんだかんだ、みんな宮本さんのこと慕ってるし」



慕ってる?


まぁ、確かに俺のシンパはいるけど。


「俺を敵に回したら何にもしないからな」


俺は、敵と見なしたら容赦しない。

頼まれたって、動いてやらない。

困るのをただ見てるだけ。


・・だから、俺を敵に回すのが嫌だから、俺の機嫌を取ろうとするんだろう?


そんな問いかけを言葉に潜ませて、笑う。



今、きっとめちゃくちゃ意地の悪い顔してるだろうな、俺。




まぁ、それが俺。


変えようったって変えられやしないさ。