時刻は、夜の9時を回ったところ。

普通に考えたら遅めかもしれないけど、予備校のある日はこんなもんだ。

むしろ今日は早いくらい。


「俺なんてさー、もうご飯もお風呂も済ませて、すっかり準備万端なのに」


口を尖らせながら、いそいそと取り出してきたのは……


「今日は、英語と数学だからよろしくね?」


テーブルに広げられた教科書類。

どこからどう見ても、ハジメの今日の宿題だ。

はぁ~っ。

こっちは、放課後まるまる勉強してきたって言うのにまだやらせる気?たまには自分でやりなよ。

恨みがましく睨んでみたものの、にこっと笑顔を返されてしまった。

……ダメだ。鈍いコイツには伝わらない。


「俺、10時には寝ないといけないから、なるべく手早く教えてね?」


首を傾げて、女の子顔負けの可愛い顔で“おねだり”されたら……

私は絶対に断れない。

昔からずっと、そうだから。