「タツキさん。満月」 ガラッと窓のようなものを開いた音がして吐息が聞こえた。 「ああ、満月だ」 「満月ですね」 景色に目を向けることなんて久しぶりだ。 景色を見たとしてもほとんどが雨。高台のお墓から観る景色を見ても清々しい気持ちになんてなれなかった。 あの景色は好きだけど、どこか違う。“目の前の事実”から逃げる為に見る景色。 「“月が綺麗ですね”レイ」 「ふふ」 思わぬ言葉に笑みが溢れる。 「何笑ってるのレイ」 「いいえ。そうですね、本当に“月が綺麗ですね”」