勇気の顔に滝の様な汗が流れる。

ロボットみたいに不自然に翔へと顔を向ける勇気。

「うわぁーん、翔ぉ」

翔に飛び付く勇気。

翔は笑いながら勇気の背中をぽんぽんと叩く。

美咲は手を額に当ててため息を吐いた。

「本当信じらんない。勇気あるくせに、変なとこ抜けてるんだから」

そう言った美咲の肩を直也がぽんと叩く。

「まぁ、良いじゃん今はまだ。そういうとこも勇気らしいよ」

勇気を見つめる直也の顔は何だかいつもよりも穏やかだった。

「ナオなんだか嬉しそうじゃない?」

美咲に言われた直也が驚いたように目を見開いた。

そして、何故か悲しげに笑うのだった。

「……うん、良かったな。って思ってさ」

「ナオ?」

そう言い残して直也は先に屋上から去っていった。


この時、様子の違う直也に美咲は言い知れぬ不安を感じていたのであった。