頭の中で何度も何度も思い出していた、甘いりんごの香りが隣にいる沙織から微かに漂う。

勇気は幸せで頭がぼーっとしていた。

「こんな時間に帰ってくるってことは部活でもしているんですか?」

勇気は沙織の質問で、はっとした。

自分から誘っておいてぼーっと黙ってしまって、恥ずかしくなる。

「……あ、いや。今日はたまたま、授業中に寝てたら先生に呼び出されて」

「こんな時間まで?」

「そう。そりゃもうこっぴどく一時間も職員室で」

勇気が顔をしかめてそう言うと沙織は「ふふっ」と笑った。

(あ……やばい。今まで顔もちゃんと見たことなかったけど、笑顔……すっげぇ可愛い)

「……?私の顔に何かついてますか?」

思わずぽーっと見惚れてしまっていた勇気。


沙織に顔を覗きこまれて、真っ赤になってしまった顔が見えない様に横を向いた。

「いや、な、何でもないです、はい」