『ピヨ。チチチ』
勇気達のクラスでは珍しい大人しい女の子。
山崎 静香(やまざき しずか)の机の上では、何処からか迷い込んだすずめが可愛らしく鳴いている。
「あれ、この子ケガしてたのかな?背中に毛の無いとこがある」
「あ、ほんとだ10円ハゲみたいになってる」
すずめの背中には、なかなか大きい肌が露出してしまっている部分があった。
それを見つめていた静香がはっと驚いた表情をした。
「しーちゃん?どうしたの?」
静香は大人しくしているすずめのお腹を人差し指の背で、柔らかく撫でる。
「この子、前に私がケガの手当てしてあげた子だ」
「えー、うそ」
「マジで?それが本当だったら凄くねっ?」
静香は愛しそうにすずめを手で包むと、窓際に歩いていく。
「え、逃がしちゃうの?」
「せっかく鶴の恩返しみたいなのに勿体ないよ山崎さん」
静香は小さく首を振る。
「ケガが治ってせっかく元の世界に戻れたのに、このまま私が飼っちゃう方が勿体ないよ」
優しく開かれた手の中から、澄み切った青空に向かってすずめが羽ばたく。
『チュンチュン』
まるでお礼でも言いに来たかの様なすずめは、昼休みのクラスの話題を占領した。