カモミール・ロマンス


夕陽がどんどん街並に飲み込まれていって、灯りのない部室が暗くなっていく。

「もうコーチには話をしたから。来週の大会までは残れって言われたけどな……無理だよ」

笠井は目立たないけれど優しく、後輩を思いやる良き先輩であった。

「……そんな。嫌です」

「嫌って……もうさ今に始まったことじゃないんだ。ずっとモヤモヤを抱えたままサッカーしてた」

独り言の様な呟やきがぽろぽろと部室に零れていく。

「あんなに好きだったんだけどな。いつからだったんだろうな……サッカーするのが楽しくなくなったの」

言葉を一つ発する度に笠井を縛っていたものが、ほろほろとほつれていく。

と同時に翔の胸をしめつける。

「コーチも優しい人だからさ、一緒に頑張ろうって言ってくれたけど、もう良いんだ。本当だったらもっと早くからお前が試合に出るべきだったんだよ」

「……先輩」

「お前だけだったなオレを慕ってくれたの。ありがとな翔。頑張れよ」

ぽんと翔の肩を叩いて笠井は部室から出ていった。