カモミール・ロマンス


「もう3年にもなって言うのもあれなんだけどさ……」

「ん、待ってそれ心当たりあるかも」

「あー、うん」

勇気と直也と翔が自分のクラスへと戻るために廊下をだらだらと歩いている。

その手にはメガホンの様に丸められてしまった英語の教科書が握られている。


「…………

ぬしたち」

ぽそっと溢したのは勇気。

「ぷっ、はっはっは」

「……くっ」

それを聞いた直也と翔が一斉に吹き出した。

勇気はそれを見て追い討ちをかける。

「何を笑っているのだね主達」

「くっくっ、ぷあー。

やめて、主達やめて」

「ユキしかも何気に声真似似てるとか反則!」

げらげらと笑う三人。

その声真似の主が後ろから近づいていることなど気づいてもいない。

「おいおい、主たち」

「だから、もう止めてー」

「いや、主達!」

「ちょ、ホントに止めなよユキ。

ってあれ?今後ろから聞こえた?」

「主達、主達!主達!!」

三人は恐る恐る振り返る。

「何の話をしているのだね?主達」

そこにいたのは瀬谷と同じ英語の講師である乙黒であった。

「乙黒先生いつから?」

「主達が英語の教科書を丸めるあたりから居たぞ」

「………ほう」

乙黒は表情が読みにくい。

ポーカーフェイスといえばポーカーフェイスなのだが無表情ではない。

笑顔のポーカーフェイス。

そのツルツルなはずの眉間に少しずつ皺が寄っていくのは恐怖以外の何物でもないのだろう。

「人様をバカにしおって!このバカ者共めがー!!!」