部活後に翔は圭介を呼び出していた。

グラウンドの端で二人は向き合っている。

「なんスか用事って?」

あからさまに面倒くさそうな態度をとる圭介。

常識的に考えたら部活動で新入生がキャプテンに向かってこんな態度を取れはしないのだが。

「うん実は」

翔はゆっくりと両の肩から重たい荷物を外していく。

それと共に幾つかの大切な物がこぼれ落ちるのを気付いていた。

翔の真っ直ぐな瞳に圭介は少したじろいだ。

「今さらだけど僕はキャプテンだけど、僕より上手い子は沢山いる。

圭介は新入生だけど、この部活で誰よりも上手い」

わざとふてぶてしい態度を取っていて、急に見つめられたかと思ったら誉められる。

圭介は混乱していた。

「僕はキャプテンとしてチームの土台となって頑張る。

圭介はプレーでどんどん皆を引っ張っていって欲しいんだ。練習メニューとかも良かったら一緒に考えてくれると助かるんだけど」

冗談じゃないことは翔の瞳を見れば分かった。

だがあえて圭介は聞く。

「別に良いけど。オレはあんたについていくつもりはないっスよ?」

圭介を見つめる翔の表情は変わらない。

そして感情があまり読み取れない普段となんら変わらない声色で答える。

「僕についてくる必要はないよ。だってこれからは僕達でチームを引っ張っていくんだから。

僕はキャプテンで、そう圭介」

夕日が照らしたのは優しさの中に強さを秘めた翔の笑顔。

「君が司令塔」

軽くなった肩。

プライドはこぼれ落ちて、そして大切なものを拾う。

「司令塔って……オレ、MFじゃねえっての」

背を向けた圭介。

その身体が反転するまでの間に頬が自然と上がっていったのを翔は見てしまっていた。

「これから宜しく。お疲れさま」

「……っす」

すぐに隠れた太陽。

心もとない街灯がグラウンドを照らしている。

職員室と二年生の教室の一つにだけ電気がついている。

また一つの青春を隠して日は塗りかわる。