バンドの演奏が止み、辺りが静寂に包まれた。

勇気は握りこぶしをつくり、息を吸った。


「オレ…………




沙織ちゃんのこと好きだよ」


まるで勇気の、振り絞った勇気に対する声援の様に、バンドの演奏に対する拍手が巻き起こる。

沙織はただ勇気を見つめていた。

勇気もまた目をそらさずに沙織のことだけを見つめている。


「嬉しい……ありがとうユキくん」


勇気の位置からでは見えなかったが、沙織の目にはうっすらと涙が溜まっていた。


「あ、えっと……

だから、その。


もし良かったらオレと……」

勇気は少しだけ視線を下に向けて頭をかいた。

たった一言を伝えるのがこんなにも難しいなんて、実際に告白をしてみなければ感じることはないだろう。

自分が好きな人に好きと伝えて、恋人という関係になってくださいと言う。

無駄なようにも思えてしまう一連の流れすら大事にと。そう思えるのは幸せなことなのかもしれない。

「あのねユキくん。
私まだ自分の気持ちが分からないんだ。

今は勉強が凄く忙しいし、きっとそう言う関係になれてもユキくんを寂しくさせちゃうと思うの。

だから……ごめんなさい」