カモミール・ロマンス



放課後。

美咲は1人、校舎の周りにある桜の木の下にいた。

鮮やかなピンクがひらひらと舞い落ちる。

一枚の花弁を取ろうと握った手のひら。

花弁はひらりとすり抜けて、地面にふわりと着地した。

「ほのかだけど優しい香り。

私は桜の花が好きよ」

美咲は誰に言ったわけでもないが、小さくそうこぼしていた。

目を瞑ると、あの時のことが思い出される。

同じように桜が満開になった春のことだった。

「よーっす。何してんの?お嬢さん」

美咲はゆっくりと目を開ける。

そこには花弁が欠けていない桜の花を持った直也の姿があった。

直也は無言で美咲に桜の花を手渡す。

「何してたの?」

直也がそう聞くと、美咲は優しい表情で桜を見上げる。

「思い出してた。あの時のこと」

「あの時のこと?」

直也は美咲が見上げている桜の木を見上げる。

優しい香りがした気がした。

「小学4年生の時に、直也が告白してくれた。あの時のことを思い出してたの」