勇気は翔を見る。
「なにあいつ?どうかしたのか?」
勇気は本当に心当たりがないのだろう、目を点にしている。
翔はいなくなった直也を見るように、いつも直也が寝そべっている場所を見た。
「分かんないけど、多分……
多分、美咲のことが関係しているんだと思う」
「美咲?なんで美咲のことで直也が機嫌悪くなってるんだよ?」
翔は知っていたのだった。
見ていたわけではなかったが、その場面に偶然に出くわしてしまった。
美咲と直也の過去。
「…………最近ちょっと美咲の様子がおかしかったから、気にしているんじゃないかな?
ほら、ナオってああ見えてお節介焼きだから」
翔はまだ勇気に伝えるべきではないと判断して口をつぐむ。
「……ふーん。
翔もナオも気にしすぎだと思うけどな。
美咲なんていじめられるキャラでもないし、様子がおかしかったっていっても美咲は平気って言ったんだろ?」
「うん、そうだけど」
「またその内、ガミガミ言ってくる様になるって」
にっと笑う勇気。
翔は作り笑いをしたが、勇気の顔を見ることはできなかった。
涼しい風が頬を撫でて、幾度と無く消えていった。



