桜ノ宮付属への最寄りのバス停に本日七本目のバスが到着した。


「ね、ねぇ。文化祭って私服じゃなくて良かったのかな?

私達だけ制服だったりしたら目立っちゃったりして」


バス停の時刻表の端っこにわずかに写る自分を見ながら、小柄女の子が髪の毛をしきりに気にしている。

「もー、そんなの良いから早く行こうよ。

終わっちゃったらどうするの?」

もう一人の黒髪の背の高い女の子は何故だか急いでいる様で、しきりに携帯を開いた。

「文化祭は4時までって連絡あったんでしょ?

愛しのあの人に早く会いたいのは分かるけど、私まで焦らせないでよ、沙織」

「そ、そんなんじゃないよー。香代のバカぁ」

沙織はぷくぅっと右の頬だけを膨らませた。

「でもま、私も沙織も他校の文化祭デビューなわけだし?

張り切って行きますか!」

「って、あれ?なんか私よりヤル気満々?

ま、待ってよ香代ぉ」

こうして制服に身を包んだ2人が桜ノ宮付属へと足を踏み入れるのだった。