そして文化祭当日。

『桜ノ宮大学付属高校文化祭』略して『桜宮祭-オウグウサイ-』が始まった。


校門から校舎まで所狭しと並ぶ屋台。

たこ焼き、焼きそば、フランクフルトに肉巻きおにぎりの香ばしい香りが朝早くから漂っている。

その隣を見れば、輪投げや、輪ゴム鉄砲の射的、ピンクアフロのマネキンが佇むパイ当てゲーム屋などというのもある。

他にも綿飴やチョコバナナなどお祭りらしいものが沢山だ。

「おーっす、お前等働いてるかぁ?」


二年一組のブースにやってきた人物に、忙しく作業をしていた皆の手が止まった。

「あ、ああ、あんたは……」


「え、なに?」

だらしなく伸びた無精髭。

ぼさぼさとした黒髪、やる気の見えない瞳。

クールビズと自称するあからさまにダラダラ着た無地のワイシャツ。

「あんたは二年一組にまことしやかに居るとされていた幻の担任……ヤル気無い男(やるき ないお)じゃないか!!?」

「誰がヤル気無い男だ。

オレは柳瀬 夏生(やなせ なつお)だっつの」

「や、遣る瀬ないっつーの?」

「やなせ!なつお!!だ!!!」


柳瀬の登場に場が和む中、たった1人だけ怒りに身体を震わす者がいた。