美咲はふと「ひとの耳は良く出来ているな」と思った。

昼休みのガヤガヤとした教室の片隅に居て、お世辞にも声が大きくない真央の声が届く。

それはサラッと美咲の中に入ってきて、ビックリするくらいに強く胸を打った。

「ゴメン真央、ありがとう。

でもね、本当に今は大丈夫だよ。ほら私の勘違いかもしれないし」

美咲は笑顔を作ってそう言った。

能面みたいな笑顔。

「何かあったら私に相談してね?」

その笑顔のままで美咲は頷いた。

「うん、約束する」

「約束?本当に?」

「やだなぁ真央ってば、本当だって」

真央は小さく唇を噛み締めて、小さな手を出した。

「じゃあ指結びしよ」

「ゆびむすび?……指きりじゃなくて?」

真央は左手で美咲の右手を掴んで、お互いの小指をむすんだ。

「指きりは嘘ついたらどうこうって言うから私は嫌い。

だってそうでしょ?それってまるで何処かで相手を疑っているみたいじゃない。

私は美咲のことを信用しているからそんなこと言わないわ」

真央の小指にぎゅっと力が入っていた。

そこから真央の気持ちが伝わってくるような気がして美咲は力を入れれずにいた。