2人はバス停から歩いて3分くらいの公園へ歩いていく。
公園とはいっても背もたれの無い3人がけのベンチが2つと、一部屋分もない砂場があるだけの場所。
隣を歩いているのが好きになってしまった女の子だというだけで、勇気は自分の歩き方がぎこちなく感じた。
ちらっと横目に見ると、沙織が微笑む。それだけで幸せだと感じているのだった。
「じゃあ座ろっか」
「はい、そうですね」
拳3つ分の隙間が悲しい。
指一本分でも良いからとわざとらしく立ち上がってから、座りなおしたりするが、その差を縮めることはできなかった。
「……あの。私、進藤沙織って言います。山田川女学院大学付属高校に通ってます。2年生です。
えっと、お名前は?」
沙織の言葉一つに胸が苦しくなるほどの喜びが込み上げてくるのを、勇気は少し戸惑いながら感じていた。
「あ、オレは中山勇気。勇者の「勇」に気持ちの「気」なんですけど、ユキって読みます。
高校はバスで3つ先の桜ノ宮大学附属高校です。2年です」
あどけない自己紹介。
ゆったりとした時間が2人を包んでいく。



