瞳のどこか端っこの方で、風に揺れる黒い髪を思い出し。
鼻腔のつんと奥の方で、あの香りを思い出しながら勇気が言う。
「分かんねぇよオレだって。でも……あれからずっと、変なんだよオレ」
腕で顔は隠れていたけど、翔には勇気が耳を赤くしているのが見えた。
それに声のトーンから、勇気の気持ちが分かって。
「うん、そっか」
そう一言だけ言って翔は笑った。
「えー、ちょっとあんた達なんで納得してんの?」
まだ分からない美咲は少しだけ置いておいて、翔と勇気は窓から空を眺めた。
羊みたいにふわふわした雲が、水色の空をゆっくりと。
ゆっくりと渡っていた。