違和感に気付いたのは、純夜の手の繋ぎ方が変わってからだった。

指を絡めるように繋がれた繋ぎ方はいわゆる恋人繋ぎと言うもので、心臓がはね上がった。


「純夜?」

痛いくらいに繋がれた手に首を傾げる。

「ね、優菜、あれ何?」

真顔の純夜の目線を辿れば電信柱からのぞく黒い影だった。

「…人じゃないの?」
そんな影を首を傾げながら見ていれば、純夜が手を引っ張った。

「違う道にしよう」

そう言った純夜に眉を寄せる。

「駅、もうすぐじゃない。」

大体、人だけでどうだって言うのさ。

私がそう言えば、純夜が首を振った。

「今日は違う道にしよ。」

純夜がまっすぐ人影を見ながら言う。

駅、もうすぐなのに。

そう思っても、純夜の顔色に頷く事しか出来なかった。

「じゃあ、回り道になるね」

私の返事にホッとしたように純夜が笑ったのを見て、私も何故かホッとした。