俺たちも、頑張らなきゃいけない。


主役として。


悪役に甘んじてくれる、裕二たちのためにも。


「最後に、皆さん、わたしにチャンスをくれて、ありがとうございましたっ」


山本が俺たちに頭を下げる。


「いいってことよ」


「お互い、頑張ろうねっ」


『こんどの休み時間に遊ぼうね』


「うんっ」


主役をやることはできないけど。


今まで内気だった山本が、主役をやりたい、と前向きになった。


それだけでも、彼女にとってよかったことだと思う。


そして、そのきっかけを作ったのは遥だ。


俺たちも、今までやろうとしなかったことをやっている。


遥は、関わった人を前向きに変えていく。


ふと、体育館の扉に目をやる。


・・・立ち去ろうとする森野の姿が目に映った。


あまり気にしないようにしよう。


「もう少しだな・・・」


ヒゲ先生が意味深にひとり言を呟く。


・・・ま、いっか。


こうして、遥のひとことで始まったバスケは、幕を閉じた。


―――友達の輪を広げて。