土曜日、試合の日が来た。


体育館には、野次馬があふれている。


同級生はもちろん、下級生や6年生もいた。


野次馬の中には森野の姿もあった。


いったい、森野が何を考えているのか。


俺にはさっぱり分からない。


・・・この二日間、俺は考えていた。


―――この試合に、負けよう。


そうすれば、俺たちの、楽しい日々が送れる。


辛いことのない、楽しいだけの日々が送れる。


翔平たちには話していない。


余計なことは話したくないし、これは俺の独断だ。


勝つ気満々の翔平たちを、巻き込むわけにはいかない。


遥は、山本と話している。


けっこう、意気投合しているみたいだ。


「まあ、ハンデとして、ボールはそっちからでいいよ」


裕二がそう言いながら、翔平にボールを渡してくる。


「じゃ、お言葉に甘えて」


「そんくらいのハンデはもらえないと、割に合わないわよ」


審判はヒゲ先生。


「じゃあ、始めるぞっ」


その言葉で、試合が始まった。