「おっと、そうだ。俺はおつかいの途中なんだ」


すっかり忘れていた。


『おつかい?』


「ああ、そうだ。だから、今日はここまでだな」


「・・・・・・」
うん、と頷く。


去ろうとしたが、服のすそを捕まれる。


「どうした」


サインペンを走らせて、俺に見せる。


『ありがとう』


「気にすんなよ。どうせ、俺のお小遣いじゃなくて、母さんから渡された金なんだから」


「・・・・・・」
遠慮がちに、うん、と頷く。


「じゃあなっ」


うん、と頷いたのを見て、俺はその場を去った。


こうして俺たちは出逢った。


後から思えば、なんとも奇妙な出逢いだった。


まさかコイツが俺の初恋の相手になるとは、このときはまだ知る由もなかったんだ。