放課後の学校。


体育着を学校に忘れたので、取りに来たのだ。


面倒くさいが、母さんに「早く取ってきなさいっ!!そうじゃなきゃ、メシ抜きよ!!」と脅されては、行かないわけにはいかない。


無事に回収して、廊下を歩いていると。


ふと、ヒゲ先生を見かけた。


いやに真剣な表情で、若い女性教師・・・3組の担任と話している。


とっさに物陰に隠れる。


―――スパイみたいで楽しいじゃないか。


「あんな劇で、本当にいいんですか?大島先生」


大島ってのは、ヒゲ先生のことだ。


「面白そうじゃないですか。なに、片岡は、杉内たちがサポートしてくれますよ」


「そうでなくて、学芸会で、声の出せない女の子が主役だなんて。見る人は、どう思うか・・・」


「山岡先生・・・・・・」


・・・なんて言うか、大人の会話だなぁ、と思う。


毎日、裏では、こんな会話が交わされているんだろう。


「俺はね・・・見てみたいんですよ」


「何をですか?」


「それは秘密です。でも、それは俺の心を揺さぶってくれるものです。きっとね」


なんとなく通りづらいので、別ルートを通って帰ることにした。


ふたりの会話を背に。