『きょうは、なにも入ってなかったの』


翌日の図書室で、遥が嬉しそうに話した。


「え・・・・・・?」


俺たちは一様に首をかしげる。


遥の顔を見るが、どうも強がりではない。


本当に、何も入ってなかったのだろう。


・・・おかしい。


あの森野の様子なら、もっとエスカレートしていいはずだ。


・・・・・・ひとを疑うようで嫌だが。


「森野に、なにかされなかった?」


美雪も同じことを思ったのだろう、そう訊いてきた。


『だいじょうぶなの』


昨日とは一変して、明るい笑顔でそう言った。


・・・・・・なにかが引っかかる。


けど。


「とりあえず、森野のことは解決したってことか?」


翔平がまとめる。


「・・・・・・とりあえずな」


「でも、なるべく関わらないようにしたほうがいいわね」


「そうだな」


「クラス違うんだし、こっちから行かなけりゃ、話すこともないだろ」


「学芸会の練習のときだけは、森野になにかされないように気をつけろよ」


「・・・・・・」
・・・うん。


俺の言葉に、遥が頷いた。