翌朝。


昇降口で、遥を見かける。


なんとなく嬉しくなって、声をかける。


「よぉ、遥」


「・・・・・・」


俺の声に無反応だった。


無視した、というよりは、俺の声に気がついていないみたいだった。


手には小さい紙が広げられていた。


「こちら、杉内光一。片岡遥、応答を願う。ガー」


トランシーバー風に話す。


だが、それでも無反応。


「・・・お前、朝っぱらからなにやってんだ?」


登校してきた翔平に突っ込まれる。


「なんだ、いたのか」


「今来たんだよ」


そんな中、ようやく遥が振り返る。


俺たちの顔を見て、あわてて紙をポケットの中にしまう。


小脇に抱えたノートと、それにはさまれたサインペンを取り出す。


『おはようなの』


「おはよぉっ。遥ちゃんっ」


「おはよ、遥。さっきから挨拶してんのに、無視しやがって」


「お前、あの変人気味な呼びかけが挨拶なのか?」


翔平のツッコミはスルーする。


『ごめんなの』


申し訳なさそうに言う。


「冗談だ。そう気にすんな」


「・・・・・・」
・・・うん、と頷く。