「今も、好きなの……?」


答えを聞くのが怖い。

でも、知りたい。



「あのね、美園。聞いて欲しいんだけど」

「え?」

「俺、愛美の事、好きだったよ。すごく。でも、人の心は変わる。俺はもう、あの頃の俺じゃない。今は今で、あの頃はあの頃なんだから」



それは、どういう意味だろう。

啓ちゃんは、マフラーに顔をうずめて、呟いた。



車が横を通り過ぎる。


啓ちゃんは、立ち止まった。
あたしも、つられて立ち止まる。



「だから、美園との事、からかってたとかそんなんじゃないんだ。遊んでたわけでもない。でも、俺は美園を自分の都合に巻き込んで、傷つけて……でも、俺……」



ああ、今。啓ちゃん、精神不安定。

くるしそうな顔がちらつく。




「あたし、そんな事言った?一言でも、そんな事……」

「……でも、美園を傷つけたことには変わりないよ。だって、美園、最近、哀しそうな顔ばっかりじゃん。無理して、笑ってるじゃないか……」



そんなの、啓ちゃんだって……。

じわじわ、じわじわ、涙。


「あたしは、一度もそんな事思った事ない。だから……そんな事言わないでよ……」




ああ、また涙が溢れてくる。

水道出しっぱなしみたいに、とりとめもない。




あたし、啓ちゃんの事、困らせてたのかなぁ。苦しめてたのかなぁ。

気づかなかったよ。ごめん。