生活指導でステージに出てきた、口紅の濃いオバン先生がスーツの下に着てる、薄ピンクのブラウスを見て、当たり前のようにあの人の事を思い出した。



愛美さん、言ってたなぁ。

今まで苦しかったって。泣いてたし。



あたしに最後、笑いかけてくれなかった愛美さんの表情が、あたしの胸をキリキリさせた。




もし、愛美さんが啓ちゃんの元カノじゃなかったら、普通に仲良くなってたかもしれない。


でも……啓ちゃんが好きだった人だから。




気を抜くと、また涙が出そうになるから、あたしは眉間にしわを寄せていた。




今も好きなのかなぁ。

涙が出るくらい、好きだった?



大好きな人に裏切られたっていうエピソードは、本当?

そういえば、どうして愛美さんは、あのマンションを知ってたんだろう。



「他に諸連絡のある先生方、いらっしゃいますでしょうか」

ざわざわ。


「では、高校二年生から各教室に戻ってください」

ざわざわ。



「美園。美園?」

「へ?あ、終わった?」



しまった。

ぼーっとしてた。



明日香は、何だか変な顔してる。

『やっぱ、何かあったのかな』って心配してる。




ごめん、明日香。ごめん。