クリスマス・ハネムーン【ML】

 ただの『霧谷』だって、そんなに多い姓じゃない上。

『ヴァルトヒェン』なんてヤツまでついた日には、ハニーの身内以外、まずありえないはずで。

 佐藤が、恐る恐る、みたいに聞いて来た。

「ヴァルトヒェン・霧谷って……本当に?
 じゃあ、相模さんと霧谷さんは、一体、どんな関係だって言うんですか!」

「霧谷さん本人から、聞いてないですか?」

「ええ」

 ちょうど、そんな話になる所で、暴漢に襲われたのだと言う佐藤に、僕は、軽く息を吸い込んだ。


 ……ごめん、ハニー。


 あんたが、どんな風に佐藤に説明するつもりだったか知らないけれど、言っちゃうよ?

「僕はハインリヒ・ヴァルトヒェン・霧谷の籍に入って戸籍上は『義理の息子』になりました。
 けれども、実態は。
 霧谷さんの配偶者のつもりです」

「配偶者って……男同士、なのに?
 確かに昨日の夜にお二人が、恋人同士だと言う話は、聞きましたが……
 実際は、そんな軽い間じゃなかった、ってことですか?」

「そうです」

 佐藤の質問に。

 なるべく、きっぱりと答えたつもりの僕の声は、震えてないだろうか?

 ハニーが僕の配偶者であること。

 それは、別に、恥ずかしいことじゃない。

 ハニーの隣に居ることを許されるのなら。

 こんなに嬉しいことはない。

 ……けれども。

 僕の告白に、佐藤とジョナサンが、同時に唸る声を聞いて。

 僕は、凹みそうになった。

 それを踏みとどまって、きり、と睨む。

「男同士で恋人だの、結婚だのって、気持ち悪いですか?
 でも僕は、真剣なんです。
 ハニーが……いえ。
 ハインリヒが無事に戻るなら、僕は、何でもしますから。
 是非協力させてください」