クリスマス・ハネムーン【ML】

 そんな、僕の思いも知らず。

 ジョナサンは、自分の顎を触りながら、ふむふむと、頷いた。

「……なぁ、You。
 もし、良かったら……俺に、全部話してみないか?」

「……へ?」

 一体、何を?

 なんて、聞く間もなかった。

 今まで、僕と。

 ある程度距離を……間合いってヤツを保っていたジョナサンが、急に、近づいて来たんだ。

 その圧迫感に、無意識に後ろに下がれば。

 ますます、ジョナサンは、近づいて来て。

 あっという間に、僕は、壁際に追い詰められた。

「実は俺もゲイの端くれでさ。
 だから、Youのどんな話でも聞ける、と思うんだ。
 しかも、俺……
 その……Youに一目惚れみたいでさ。
 どんな面倒な相談事も、business(ビジネス)抜きで付き合うぜ?
 男が切れると寂しいって言うなら。
 この俺が、新しい恋人になってやってもいい」

 口調は、軽く。

 でも、何を考えて居るのか良く判らない声音で、ジョナサンが言った。

「……は?
 あんたは、一体何を言ってるんだ?
 僕には、そんな趣味無いし!」

 うっとうしいから、どけ、と。

 邪険に払おうとした手を、ぱしっ、と捕まれた。

「そんな趣味は無ぇ?
 その、Youの首筋にあるヤツは……Hickey mark?
 キスマークってんじゃないか?
 女につけられたにしては、強烈だよな?
 真新しいし。つけた相手は。
 もしかして……霧谷博士?」

 ……っ!?

 思わず、ジョナサンの手を思い切り、振り払い。

 自分の首筋を押さえて一歩下がれば。

 煉瓦造りの壁に、僕の背中がぶつかって。

 ガッ、と肘を壁に擦ってしまった。

「痛っ……!」

「Oh! 悪い! ケガは!?」

 思いのほか大きかった、肘を打つ音に。

 心配そうな顔をして、更に僕に近づくジョナサンを、僕は睨んだ。

「……僕に、触るな」