クリスマス・ハネムーン【ML】

「……ん、なモノ。
 持ち歩く習慣なんて、ないし」

 僕が肩をすくめれば、ジョナサンは、自分の頭をガシガシと掻いた。

「持ってておけよ、Youは外国人なんだからさぁ。
 遊びはともかく。
 何かあった時、困るだろ?」

「……不法滞在は、して無いよ?
 観光で昨日、ここに来たばかりだし」

 僕の素っ気ない言葉に、ジョナサンは、きらり、と目を細めた。

「……知ってるぜ?
 ついでに、本当は二十歳超えてることも。
 職業は、看護師だっけ?
 霧谷博士の付き人で……」

「……おい」

 僕は、コイツに自己紹介した覚えが無いぞ?

 なのに、知りすぎている情報に、身構えれば。

 ジョナサンの方は、笑って、手を振った。

「なに。
 俺、実は、Mr.霧谷担当の警官でさ」

「え?」

 なんて、驚く僕に、彼は、片目を瞑った。

「普段は平和なこの街も。
 最近、物騒でさ。
 多分、イタズラだろうけど。
 環境保護団体を名乗るヤツらが海を守るために、とか言って。
 昨日、市長主催の宴会に、出席したメンバーや関係者を襲う、なんて手紙が届いて、今日は、特別警戒中なんだ。
 ん、で。
 俺、日本語喋れるから。
 日本企業に所属する、Mr.霧谷の担当になったんだ」

「……ふうん、なるほどね」

 口調は、軽く。

 だけど、僕は、自分の中の警戒を解かずに、ジョナサンを睨んだ。

「で……あんたが、その。
 過激な環境保護団体の一員じゃないって証明は?」

「……Why?」

「普通、警官って、二人一組で動くもんだろう?
 それは、日本でも、外国でも変わらないはずだ。
 それに、霧谷さんの担当なら、僕じゃなく、彼に張り付いてなくちゃダメだろう?」

「Oh……参ったなぁ」

 ジョナサンは、困ったように腕を組んだ。

「日本の警察手帳みたいなモノは持って居るけど、カジノの看板を読むのに苦労しているYouに見せても、本物かどうか、判らないだろ?
 真っ昼間に、人混みの中。
 このカッコ(制服)で歩いてることで信用してもらうしかない。
 ……それに、俺が一人だったワケは……」

 そこまで言って、ジョナサンは、今までの陽気な笑い顔を一瞬、消した。