「君は……君達は、一体、何をしているんだ?」

 低い、不機嫌そうな声と。

 そして、でっかい影に、入口の方を見れば。

 木目の綺麗な一枚板の扉に、もたれかかるようにして、ハニーが立っていた。

 予定よりだいぶ早く帰って来た、ハニーは。

 行ったときとは、だいぶ違ったカッコで帰って来た。

 ちゃんと締めていたネクタイを緩め。

 きっちりキメたはずの髪がたを手ぐしでほどいて、大分ラフな感じになったけれども。

 もっと、違うのは。

 彼がかなり、怒っているようだ、っていうことだ。

「霧谷さん!
 ずいぶんと、早いお帰りじゃないですか!
 帰るときは、電話をしてくれれば、すぐに迎えにあがる、って言ったのに……!」

 ハニーの怒りが、あまりに静かで、気がつかないのか。

 佐藤が、普通に話しかけると、ビン、と言葉を弾くような声が返る。

「ごまかすな。
 私が早く帰って来ると、なにか。
 マズイことでも君たちはしようとしてたのか?」

「……は?」 

 ここで、ようやく。

 佐藤は、何かハニーが怒っているコトに気がついたみたいだった。

 だけども『それがなんで』かが、まるでわからないような、怪訝な声を出し……

 ……反対に、僕は、判ってしまった。

 もしかしたら。

 海に潜る時でさえ、海バン一つになることはないほど。

 めったにヒト前には晒(さら)さない、素肌を見せ。

 佐藤の手にまだ、僕のシャツが握られているのを見て、何か誤解をしているんじゃ……!

「……今さっき扉の前で。
 螢(ほたる)が触るな! と、怒鳴っているのを聞いた。
 まさか、佐藤君が強引に、脱がせたのか?」

「え?
 はぁ……強引、と言ったら強引かもしれませんが……」