クリスマス・ハネムーン【ML】

「君の言う家族の形は、確かに。
 理想ではあるが……それが『全て』では無い、と私は思う」

 ハニーは、僕の耳元まで長身をかがめてささやいた。

「確かに生命体の……動物的な家族のあり方としては。
 間違いないかもしれないが……
 私達は『人間』だ。
 もう少し違う『幸せの形』を追求しても良いのだと信じたい」

「ハニー」

 僕が名前を呼ぶと。

 彼は、僕の横で、微笑んだ。

「達成すべき目的がある場合。
 数学的に方程式のような答えが出るものであれば。
 私は、最短、最良の手段を高じて突き進む。
 しかし……時には。
 手段を楽しむのを目的にしても良いじゃないか?
 ……結果が出ない事は、罪では無いのだ」

 そう言ってハニーは僕の耳たぶをそっと噛んだ。

「……っ」

 その刺激に身が震えれば。

 ハニーは、妖しく微笑んだ。

「……例えば、快楽。
 世界で一番愛しい。
 たった一人を求めるのは、なぜいけないのだ?」

「ハニー……」

 彼の熱を帯びて来た唇が。

 僕の首に口づける。

「男女でいるからと言って、必ず子供を作るとは、限らない。
 子供が、できたからと言っても。
 家族がずっと一つでいられる証(あかし)になるとは限らない」

「……う……」

 ここで思わず声がもれたのは。

 ハニーに首筋を強く。

 吸われるように口づけられたから、じゃない。

 ハニーと出会う前のあまり幸福じゃなかった過去を思い出したから。



 もう、雪の日に。

 姉が逝ってから、だいぶ経つ。

 父親違いの病弱な姉だった。

 一応自分を生んでくれた両親とも全て。

 今となっては、縁遠い。

 社会の後ろ暗い場所に生きて、なおさら。

 人の世に、確かな繋がりが無い事を、見せつけられ、良く知ってたから。

 目に見える繋がりを、証明しにくいハニーの恋が。

 不安だったのかもしれなかった。