クリスマス・ハネムーン【ML】


 今まで、静かに怒っているだけのハニーの様子が変わった。

 どんな時も、儚げとも言える上品な紳士然、としているハニーが、不敵な笑みを見せたんだ。

 そんなハニーに、岩井が怪訝な声を出す。

「ああ~~?」

「興奮すると、周りが見えなくなるのは。
 別に、螢だけのことじゃなさそうだ……と、言うことだ」

 ハニーの言葉に、僕自身も驚いて。

 え……っと、見回した先に。



 ……特に変わったことは、なかった。



 陽は、完全に、高く昇っていた。

 さっきまで嵐になるかと思ってたほど強かった風は、却って、天空の雲を吹き払い。

 ケアンズのビーチに、彩りが戻って来つつあった。

 それと一緒に、観光客や浜で散歩する地元の人々も増えて……

 なんとなく、野次馬が、僕たちを取り囲んでいるような……気が……する。

 そりゃあ……良い大人の東洋系外国人が三人集まり。

 二人は、水着も着ないで、普段着のままずぶ濡れ。

 一人は、部屋着に裸足で。

 なんだかんだと叫びあっていたら……興味ある暇人は足を止める……かもしれない。

 そもそも、人影は、ハニーがここにつく頃からまばらにあったし。

 自分たち以外の人間のことを観察する余裕はなかったから、気にしてはなかった。

 野次馬に囲まれていれば。

 確かに、このまま。

 ずっと立ち話をしていたい環境じゃなかったけれど。

 特に変なことの無い風景に、僕は、クビを傾げかけ……

 その場に知り合いを見つけて、思わずあ。と声をあげ。

 岩井は、眉をひそめると、ハニーに言った。

「……なるほど。
 あんたの言う通り。
 オレにも、ヤキが回って来たみたいだ」

 全く、やってらんねえぜ、と肩をすくめた、岩井にも。

 僕たちを取り囲んでいた野次馬のほとんどが。

 私服の警官隊だって気がついたみたいだった。