クリスマス・ハネムーン【ML】

「知ってるか?
 コイツは、昨日の夜。
 お前に薬を飲ますために……生かすために『本当に何でも』したんだぜ?
 オレの無理な要求をほとんど抵抗もせずに呑んで。
 鳴き喚く声を、お前にも聞かせてやりたかったのに。
 お前ってば、ケイが、どんな大声で騒いでも、ぐーぐー眠っているんだもんよぅ~~」

「……!」

 その、岩井の言葉に。

 今まで、うつむいていたハニーが、バッ、と顔を上げて、岩井を睨んだ。

 その。

 怒りの表情を見て、岩井がせせら笑う。

「お~~コワ~~!
 いつも取り澄ました、お偉い博士さまも。
 やれば、オレ達の仲間みたいな表情(かお)が出来んじゃねぇか、全くよ!
 てめぇらが、別れるなんてぇ話が、ただの茶番か、マジかは、知らねぇが。
 あの時のケイは、本マジだった。
 アレを見る限り、ケイが、口で何を言おうとも。
 博士さまを連れ帰ったら、まだまだ遊べそうだぜ!」

 そう言って、ハニーを捕らえようと、つかみかかった岩井の腕を。

 僕は、二人の中に一歩踏み込んで、べしっと叩いた。

「岩井に、ハインリヒは、触らせない」

「……ほら、やっぱり、本音は、そこだろ?
 ケイよ!」

 岩井は、腹をよじらん勢いで大笑いした。

「何ども言ったはずだ!
 お前の欠点は、欲しいモノの前では、視野が狭くなり、冷静じゃなくなる所だ!
 どうせ、あることないことを言って。
 オレの注意から、博士を外させる予定だったんだろうが、失敗だったな!」

 そう、岩井は、僕らに向かって、指を突き刺すように、指((さ)した。

「ま、今日は、無理でも、また、いずれ。
 仲間を集めて、お前をさらいに来てやるからな!」

 今度は、雇われて来るワケじゃないから。

 もっと周到で失敗はしないと、高らかに宣言する岩井に、ハニーが、低く声を出した。



「岩井君……と言ったか?
 君に『今度』というチャンスは、無い」